5分で学ぶ。今さら聞けない、物流の働き方改革! ~2024年問題に向けて~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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5分で学ぶ。今さら聞けない、物流の働き方改革! ~2024年問題に向けて~

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 画像素材:Mugimaki/PIXTA

これまで物流は、ピーク時には現場のドライバーや倉庫スタッフが無理をして頑張って回してきました。しかし、2024年問題に向けて、働き方改革が進めば、その無理が利かなくなりピーク時の対応力がなくなってきます。つまり、ピーク時には運べない、仮に運べたとしても輸送コストが高騰するなどのリスクがあります。例えばドライバーの拘束時間の制限にしても、労働時間を上手く調整する必要が生じるので、同じルートを走れなくなります。一時的に無理をさせると、結局はどこかでそれを調整しなければならなくなるため、結局は全体の効率が落ちてしまうことになります。今後はさらにドライバー不足が深刻になっていきます。2024年問題までもう時間もないため、働き方改革も一気に進めていかなければなりません。今までのやり方では対応できなくなっています。

本稿では、今さら聞けない、2024年問題の物流の働き方改革について、忙しい皆さんでも5分で理解できるように分かりやすく解説します。

執筆:東 聖也(ひがし まさや)

<目次>

1.2024年問題が抱える5つの課題とは?

2.経営トップが高い視点で判断するとき

3.運送会社と荷主の逆転するパワーバランス

4.おわりに

 

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1.2024年問題が抱える5つの課題とは?

 

 

「物流の2024年問題」とは、2024年4月1日以降にトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に制限されることで生じる懸念です。この規制
が発動するまで残り1年を切っていますが、ある実態調査によればこの問題を知らない人がなんと半数以上いるというから驚きです。

この問題は、物流業界における労働力不足と時間外労働の問題に直結しています。トラックドライバーは、商品の輸送や配送を担当し、物流業界において重要な役割を果たしています。しかし、現在トラックドライバーの数が不足しており、需要に応じた適切な輸送が行われない状況が続いています。時間外労働の上限が制限されることにより、トラックドライバーは労働時間をより効果的に管理しなければならなくなります。これにより、物流業界では以下のような諸問題が懸念されています。

1. 配送の遅延

労働時間の制約により、トラックドライバーが時間外労働を制限する必要があるため、商品の配送に遅れが生じる可能性があります。

2. 需要への対応の難しさ

物流業界では需要の急増や変動が頻繁に発生します。労働力不足の中で時間外労働が制限されると、需要への迅速な対応が困難になる可能性があります。

3. 運賃の上昇

労働力不足により需要と供給のバランスが崩れ、トラックドライバーの需要が高まると、需要と引き合うための報酬である運賃が上昇する可能性があります。

4. 物流コストの増加

配送の遅延や運賃の上昇により、物流コストが増加する可能性があります。このコスト増は企業や消費者に影響を及ぼし、商品価格の上昇やビジネス活動の制約につながる可能性があります。

5. トラックドライバーの給料減少

物流は、労働集約型の典型です。当然、ドライバーの労働時間を減らすということは、それに比例して売上も減ることになります。結果として、ドライバーは時間外手当を受け取ることができないので、給料は減り、会社の売上も減るので基本給アップも見込めず、転職するドライバーが急増する懸念があります。それによって、トラックドライバー不足にさらに拍車がかかる可能性があります。

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2.経営トップが高い視点で判断するとき

 

これからドライバー不足がより厳しくなっていきます。そのリスクを経営課題として捉えて部門横断的な様々なチャレンジをすることが求められます。企業が単独で動くと「お宅ができないならよそにたのむよ」と言われてしまうので、単独ではなく、みんなで動かなければなりません。そんな状況ではもはやないことを、皆さんが知る必要があります。

現在の状況では、同じ会社内でも物流、製造、営業の人たちが働き方改革について微妙な意見の違いがあります。だからメーカーが納品リードタイムを見直そうとしても、営業部門にお願いしなければならないけれど、営業部門は取引に影響するのを心配して協力を拒みます。しかし、今改革に踏み切らなければ近い将来必ず、物流コストが跳ね上がって利益が圧迫されたり、場合によっては輸送できなくなるリスクがあります。

そうなる前に、経営トップの人たちがより高い権限と視野で判断しなければなりません。それに一般の消費者も、今の物流の状況を知ってもらう必要があります。宅配便の不在や引っ越しなど消費者物流についてある程度理解は広まりましたが、まだまだ十分とは言えません。

もう1年を切りましたが、今からでも手遅れということはないと思います。部品が届かなくて生産ラインがストップするとか、店頭に商品が並ばないという事態になってからでは遅いので、そうなる前に皆でできることをやらないといけません。


3.運送会社と荷主の逆転するパワーバランス

 

これまでは、物流事業者は常に荷主よりも弱い立場にありました。「弊社の要求を受けてくれないのだったら、よその運送会社に頼むからいいよ」と、取引停止を匂わせつつ、高圧的な態度で物流事業者に応対する荷主も少なくありませんでした。しかし、近年はこのパワーバランスが完全に逆転しつつあり、物流事業者の方から「弊社の条件を受け入れられないのであれば、もう運ぶことができませんよ」と脅しをかけれれる始末です。まさに、ブーメランの法則ですね。。。そして2024年問題では、このパワーバランスの逆転がさらに進んでいくと思われます。物流事業者が完全に主導権を握る時代がもう目の前にきているのです。「うちは物量が多いから、大丈夫だよ」と大口の取引先だから安心だと思っていると、足元をすくわれます。いくら物量が多くても、手間や時間がかかる荷物や荷主は物流事業者からどんどん敬遠されるようになります。なぜなら、物流事業者の課題が、売上拡大よりも、リソースの確保にシフトするからです。いかにして限られたリソースで荷主の荷物を効率的に運ぶか、というところに視点があたるので、面倒な荷主や荷物はごめんだ、ということになるのは当然のことです。

「これまでの長年の取引があるから、温情でなんとかしてくれるだろう。」たしかに、そういったこともあるかもしれませんが、ビジネスの世界はそんなに甘くはありません。一義的な部分ではそうした気持ちがあったとしても、二義的な部分ではやはり、皆生き残りをかけて必死に戦っています。きれいごとだけではやっていけないというのも物流事業者のリアルではないでしょうか。

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4.おわりに

 

本稿にて取り上げた物流の2024年問題がもたらす物流ビジネスへのリスクは、すべての荷主、すべての運送会社が、物流の2024年問題を回避すべく、合理的かつ前向きな行動を起こせなければ、必ず訪れる未来です。物流業界では、これらの問題を解決するために様々な対策が模索されています。例えば、効率的な配送ルートの最適化や物流システムの導入、労働環境の改善などが検討されています。また、労働力の確保やトラックドライバーの労働時間管理に関する規則の見直しも行われています。

物流の2024年問題は、日本の産業界全体に影響を及ぼす重要な課題です。関係者や政府はこの問題に真剣に取り組み、持続可能な物流システムの構築に向けた対策を進めていかなければなりません。

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