クラウド型WMSとは?SaaS型・ASP型の違いやメリット・デメリット、費用相場|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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クラウド型WMSとは?SaaS型・ASP型の違いやメリット・デメリット、費用相場

クラウド型WMSとは?

物流現場では人手不足や配送負荷の増加により、効率化が急務となっています。倉庫内における商品の入庫管理や在庫管理、出荷管理などの倉庫管理業務を効率化するためのシステムとして、WMS(Warehouse Management System)が注目を集めています。

特に近年、「クラウド型WMS」という言葉をよく耳にするようになりましたが、「SaaS型」「ASP型」といった用語が混在し、自社に最適なWMSを選定できずに困っている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

実際、WMSでは総じてASPと呼んでいるケースが他の製品群より多いように思われます。SaaS型とASP型の違いは何なのか、マルチテナントとシングルテナントとはどういうことなのか、費用対効果はどう違うのか——これらの疑問を解決しながら、自社に最適なWMS選定のヒントをお届けします。

ピーター・ドラッカーが『マネジメント』で述べた「企業の目的は顧客の創造である」という言葉を物流業界に当てはめると、顧客満足度を向上させるための効率的な物流体制の構築こそが、現代企業の競争優位性を左右する重要な要素となります。その実現手段として、適切なWMS選択が企業の成長戦略に直結することを念頭に置きながら、本記事を読み進めてください。

2025年5月25日  執筆:東 聖也(ひがし まさや)

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クラウド型WMSの比較早見表

WMS比較早見表

クラウド型WMSとは?

クラウド型のサービスはインターネット環境とブラウザがあれば利用できるため、場所を問わず使用できるという点も大きな魅力です。従来の物理的なサーバーを自社で保有するオンプレミス型に対して、インターネット経由でWMSの機能を利用する形態を指します。

これまで、WMSはオンプレミス型が主流でした。その理由は、一口に「物流」と言っても各社で異なる課題があったため、カスタマイズが必須だったからです。しかし、技術の進歩とクラウドインフラの成熟により、近年ではクラウドWMSのベンダーがサービス提供実績を重ねるうちに、業界・業種ごとに必要となる機能が何で、どのようなオプションが求められているかのナレッジが蓄積されてきました。

クラウド型WMSのメリット

1. 初期投資の大幅削減

従来型のソフトウェア開発であるオンプレミス型は、企業に合わせて開発・カスタマイズを行うため高コストになる傾向にあります。場合によっては、数百~数千万円、作りこむと億単位になることも。クラウドサービスはある程度パッケージ化されたソフトウェアのため、100万円以下でもシステム導入が可能です。

2. 導入スピードの向上

パッケージ型ソフトウェアをクラウドサーバーにインストールした形式(SaaS)のWMSです。すでに開発が完了しているため早期導入が可能。従来6ヶ月から1年以上かかっていた導入期間を、1~3ヶ月程度まで短縮できます。

3. 運用・保守の負担軽減

サーバーの維持管理やシステムアップデートは全てベンダー側で実施されるため、社内のIT人材不足に悩む企業でも安心して運用できます。クラウド型WMSの場合は、月額利用料にサポート費用が含まれていることが多いのが利点です。

4. 拠点展開への柔軟な対応

複数拠点を持つ企業では、新しい倉庫や事業所での導入が容易になります。統一されたシステム環境により、全社的な在庫管理や業務標準化も実現しやすくなります。

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クラウド型WMSのデメリット

1. インターネット接続への依存

クラウド型は初期投資が少なく、スケーラビリティが高い一方で、インターネット接続に依存します。ネットワーク障害時には業務が停止するリスクがあります。

2. カスタマイズ性の制限

標準機能での運用が前提となるため、独自の業務フローに完全に合わせることは難しい場合があります。

3. データ管理の制約

自社でのデータ完全管理が困難になり、セキュリティポリシーによっては採用できない企業もあります。

クラウド型WMSを導入する費用相場

クラウド型WMS(SaaS)は初期費用が0〜100万円と最も低く、月額利用料は3〜30万円程度です。5年間使用した場合のトータルコストは180〜1,800万円となります。

費用変動の要因として、以下が挙げられます。

  • 利用ユーザー数:従業員規模により月額料金が変動
  • 取扱商品数・出荷件数:処理量に応じた従量課金制
  • オプション機能:基幹連携、帳票カスタマイズ等の追加機能
  • サポートレベル:24時間サポートや専任担当者の有無

SaaS型WMSとは?

SaaSがソフトウェアとして用いるのに対し、ASPは提供事業者という意味合いで用います。SaaS(Software as a Service)型WMSは、ひとつの環境を複数のユーザーでシェアします。カスタマイズ性はシングルテナントに比べて劣りますが、コストを下げてサービス提供が可能です。

SaaS型の特徴を住居に例えると、マンションのようなイメージです。一つの建物(サーバー)の中に複数の住戸(テナント)があり、共用部分(インフラ)を効率的に活用することでコストを抑制しています。各住戸は独立しているものの、建物全体の管理やメンテナンスは管理会社(ベンダー)が一括して行います。

SaaS型WMSのメリット

1. コストパフォーマンスの優位性

複数のテナントを同一のインフラ環境に同居させることで、インフラストラクチャリソースを共有することができます。これにより、インフラコストを削減可能です。マルチテナント構造により、開発・運用コストを多数のユーザーで分散できるため、月額数万円から利用開始できます。

2. 迅速な導入と運用開始

マルチテナント型のサービスにおいては、サービスプロバイダが用意したサーバーやアプリケーション、データベースなどのシステムを、複数のユーザーで使用します。ある程度できあがった環境が始めからあるうえ、サーバーを自社で用意する必要もないため、ECサイトを素早く、比較的安価に構築できる点がメリットです。

3. 継続的な機能向上

ベンダーが多数の顧客からのフィードバックを集約し、システム改善を継続的に実施します。新機能追加やバグ修正も自動的に適用されるため、常に最新の機能を利用できます。

4. スケーラビリティの確保

事業成長に応じて、利用者数や処理量を柔軟に拡張できます。繁忙期の一時的な増加にも対応しやすい構造です。

ローコードWMS

SaaS型WMSのデメリット

1. カスタマイズ制約

マルチテナントでは、アカウントなどでユーザーが区別され、それぞれの利用領域が与えられ、設定や多少のカスタマイズは行えますが、1からのカスタマイズや自由なデザインは行えないことが多いです。

2. セキュリティ面の懸念

同一のサーバーに無関係な複数のユーザーが入って利用する形態であるため、データがほかのユーザーのものと混ざってしまったり、情報漏えいが起きたりする可能性もゼロではありません。

3. 性能面での制約

出荷量が多い倉庫では、同時処理能力やレスポンスの速さが求められるため、それに応じたサーバー性能が必要となり、1台のサーバーを多くのユーザーが共同利用するようなASP、SaaSのようなクラウド型は不向きです。

SaaS型WMS導入の流れ

  1. 要件整理・ベンダー選定(1~2週間)
  2. トライアル実施(2~4週間)
  3. 基本設定・データ移行(2~4週間)
  4. ユーザー教育・テスト運用(2~3週間)
  5. 本格運用開始

SaaS型WMSを導入する費用相場

  • 初期費用:0~50万円(設定・導入支援費用)
  • 月額費用:3~20万円(利用者数・機能により変動)
  • 従量課金:出荷件数1件あたり10~50円

SaaS型WMSの主要なベンダー

ロジザードZERO EC用の在庫、店舗出荷用の在庫、卸売用の在庫などをそれぞれ管理する機能が標準装備されており、さまざまな商材や業種、BtoC・BtoBの在庫管理がこれ1つ行える点が特徴です。

Xble(キシブル) 2004年に大手携帯キャリアで運用を開始して以来、通信事業者・医薬品・食品・流通・小売(実店舗・EC)等、多岐にわたる業種で使われてきたシーオスのWMSをSaaS型にリニューアル。

クラウドトーマス 年間約790万個の出荷実績を持つ物流会社が開発した「クラウドトーマス」には、スマホとスキャナを付けたまま作業できるハンズフリー機能や物流ロボットとの連携機能、APIによる受注管理システムなどとの連携機能など、物流現場での実用的なニーズが多く反映されています。

SaaS型WMSがおすすめの企業規模・業態

推奨企業規模

  • 従業員数:10~500名
  • 月間出荷件数:1,000~50,000件
  • 年商:5億円~100億円

適用業態

  • EC事業者(B2C、B2B)
  • 小売・卸売業
  • 製造業(完成品倉庫)
  • 3PL事業者(中小規模)

ASP型WMSとは?

ASP⇒SaaS⇒クラウド の順番でインターネット経由のサービス提供は注目されてきました。ASP(Application Service Provider)型WMSは、それぞれのユーザーに対して個別の環境を提供します。個別にひとつの領域を独占できるため、カスタマイズ性が高いことが特徴です。

ASP型を住居に例えると、一戸建てのようなイメージです。各顧客が専用の建物(専用サーバー環境)を持ち、設計や内装(カスタマイズ)を自由に行えます。管理会社(ベンダー)がインフラの維持管理を行いますが、各建物は完全に独立しており、他の住民の影響を受けることはありません。

ローコード対応WMS

ASP型WMSのメリット

1. 高いセキュリティレベル

シングルテナントでは、個別の環境・システムが提供されるため、決まったユーザーしかサービスを利用できないため、セキュリティリスクを低く抑えながら運用することができます。金融業界や医療業界など、高度なセキュリティが求められる業界でも安心して利用できます。

2. カスタマイズ性の高さ

シングルテナントでは、ユーザーそれぞれに個別の環境・システムを用意するため、マルチテナントと比較して、カスタマイズ性が高く、安定した稼働を実現できます。独自の業務フローや複雑な要件にも柔軟に対応可能です。

3. 安定したパフォーマンス

専用環境のため、他の利用者の影響を受けることなく、安定した処理性能を確保できます。大容量データの処理や高負荷時の対応力に優れています。

4. データ管理の自由度

データの保存場所や管理方法について、企業のセキュリティポリシーに合わせた設定が可能です。

ASP型WMSのデメリット

1. コストの高さ

シングルテナントは、カスタマイズ性が高くセキュリティリスクを抑えられる反面、1社ごとに最適な状態に設定されるため導入までに時間がかかることや、コストが高額になるというデメリットもあります。

2. 導入期間の長期化

個別カスタマイズが前提となるため、要件定義から本格運用まで6ヶ月以上を要するケースが多くなります。

3. 拡張性の制約

事業拡大時のシステム拡張には、再構築や大幅な設定変更が必要になる場合があります。

ASP型WMS導入の流れ

  1. 詳細要件定義(4~8週間)
  2. システム設計・カスタマイズ(8~16週間)
  3. データ移行・システム構築(4~8週間)
  4. 総合テスト・ユーザー教育(4~6週間)
  5. 本格運用開始・運用調整

ASP型WMSを導入する費用相場

  • 初期費用:100~500万円(設計・カスタマイズ費用含む)
  • 月額費用:10~50万円(保守・運用費用含む)
  • 5年間総コスト:700~3,500万円

ASP型WMSがおすすめの企業規模・業態

推奨企業規模

  • 従業員数:100~2,000名
  • 月間出荷件数:10,000件以上
  • 年商:50億円以上

適用業態

  • 大手製造業
  • 大規模3PL事業者
  • 医薬品・化学品業界
  • 金融・保険業界の物流部門

SaaS型とASP型の比較

導入費用

SaaS型:初期費用0~100万円で、スタートアップ企業や中小企業でも導入しやすい価格帯です。設定作業が標準化されているため、コンサルティング費用も最小限に抑えられます。

ASP型:初期費用100~500万円で、個別要件に応じたカスタマイズが含まれるため、SaaS型の3~5倍の初期投資が必要になります。

運用コスト

SaaS型:月額3~30万円で、利用規模に応じた従量課金制が一般的です。保守・サポート費用も月額料金に含まれており、予算管理が容易です。

ASP型:月額10~50万円で、専用環境の維持管理費用が含まれます。セキュリティ対策や性能チューニングなど、個別対応のサポート費用も発生します。

カスタマイズ性

SaaS型:基本機能の設定変更や軽微なカスタマイズは可能ですが、大幅な業務フロー変更への対応は限定的です。標準的な業務プロセスに合わせることが前提となります。

ASP型:独自の業務要件に応じた大幅なカスタマイズが可能です。既存の基幹システムとの複雑な連携や、業界特有の機能追加にも対応できます。

ROI・回収期間

SaaS型:導入費用が低く、効果発現も早いため、一般的に12~24ヶ月でのROI実現が期待できます。物流コスト削減効果により、年間数百万円~数千万円の効果を得られるケースが多く見られます。

ASP型:初期投資が大きいため、ROI実現には24~48ヶ月を要します。しかし、大規模運用での効果は絶大で、年間数千万円~億単位のコスト削減効果を実現する企業もあります。

導入の容易さ

SaaS型:クラウド環境での提供により、1~3ヶ月での導入が可能です。標準的な導入プロセスが確立されており、社内IT人材が不足している企業でも導入しやすい環境が整っています。

ASP型:個別要件への対応が必要なため、6ヶ月~1年程度の導入期間を要します。プロジェクト管理の重要性が高く、専任担当者の配置が推奨されます。

拡張性

SaaS型:事業成長に応じた利用者数や機能の拡張が容易です。新拠点展開時も、既存設定をベースとした迅速な展開が可能です。

ASP型:大幅な拡張時には、システム再構築が必要になる場合があります。事前に将来的な拡張計画を含めた設計が重要です。

※ROIについての参考記事「デジタル技術が生み出すスピード経営 ~物流によるROI向上~

自社に最適なWMSの方式を選ぶ7つのチェックポイント

ピーター・ドラッカーは「効率とは物事を正しく行うことであり、効果とは正しい物事を行うことである」と述べています。WMS選定においても、単なる機能比較ではなく、自社の経営戦略に適合したシステム選択が重要です。

WMS選定フロー

1. 現状課題とゴールを棚卸しする

まず現在の物流業務における課題を具体的に洗い出します。在庫精度の向上、作業効率化、人件費削減、顧客満足度向上など、優先順位を明確にしましょう。

チェック項目

  • 在庫差異率の現状と目標値
  • 作業時間短縮の期待効果
  • 人為的ミスの発生頻度
  • 顧客からのクレーム内容と頻度

ドラッカーの「顧客にとっての価値は何か」という問いかけを物流業務に適用すると、正確で迅速な商品配送こそが最終的な価値創造につながります。

WMS選定ステップ1

2. 3~5年後の事業規模と変化のシナリオを描く

事業成長計画に応じたシステム選択が重要です。現在の規模に最適化されたシステムが、将来的にボトルネックになる可能性を検討しましょう。

検討要素

  • 売上高・取扱商品数の成長予測
  • 新規事業展開や海外展開の可能性
  • M&Aによる事業拡大の計画
  • 業界の技術革新動向

WMS選定ステップ2

3. 基幹・周辺システムとの連携要件を洗い出す

基幹システムとの連携は最も基本的なものですが、会計システムや販売管理システムとのデータ連携には、通常100〜500万円程度の追加費用が発生します。

主要連携システム

  • ERP(基幹システム)
  • 販売管理・受注管理システム
  • 会計システム
  • ECプラットフォーム
  • 配送管理システム(TMS)

WMS選定ステップ3

4. カスタマイズ深度と内製化方針を決める

業務の標準化を進めるか、既存業務に合わせたカスタマイズを重視するかの方針決定が必要です。ドラッカーの「集中」の概念に従えば、コア業務への集中のために標準化を進めることが多くの企業にとって有効です。

5. TCO(総保有コスト)とROIを数値化して比較する

5年間の総保有コストを算出し、期待効果との比較を行います。

TCO算出要素

  • 初期費用(ライセンス、導入支援、カスタマイズ)
  • 運用費用(月額利用料、保守費用)
  • ハードウェア費用(端末、ネットワーク機器)
  • 人件費(システム管理者、ユーザー教育)

WMS選定ステップ5

6. セキュリティ・可用性・BCPポリシーに適合するか確認する

企業のセキュリティポリシーとシステムの特性を照合します。

確認項目

  • データ保存場所(国内・海外)
  • アクセス制御・認証方式
  • 災害時の業務継続性
  • SLA(Service Level Agreement)の内容

WMS選定ステップ6

7. ベンダーのサポート体制とアップデート方針を確認する

長期的なパートナーシップの観点から、ベンダーの信頼性を評価します。

評価要素

  • サポート体制(24時間対応、専任担当の有無)
  • ユーザーコミュニティの活発さ
  • 機能拡張・アップデートの頻度
  • 会社の安定性・継続性

WMS選定ステップ7

インターストックのクラウドWMS(セミスクラッチの強み)の紹介

セミスクラッチ方式とは?フルスクラッチとの違い

従来、WMSの導入方式は「パッケージ」か「フルスクラッチ」の二択でした。パッケージは低コストだがカスタマイズ性に限界があり、フルスクラッチは高度なカスタマイズが可能だが費用と期間が膨大になるという課題がありました。

セミスクラッチ方式は、この2つの課題を解決する第3の選択肢です。基盤部分は標準化されたフレームワークを活用し、業務固有の部分のみを個別開発することで、コストと開発期間を大幅に短縮しながら高いカスタマイズ性を実現します。

カスタマイズとコスト最適化を両立できる理由

セミスクラッチ方式では、以下の3つの要素により、従来のトレードオフを解決しています。

1. 標準化されたコアフレームワーク 入出庫管理、在庫管理、帳票出力など、業界共通の基本機能は標準フレームワークとして提供。これにより開発工数の60~70%を削減できます。

2. 業界特化型テンプレート 製造業、小売業、3PL事業者など、業界ごとに最適化されたテンプレートを用意。業界特有の要件を事前に組み込むことで、個別開発範囲を最小限に抑制します。

3. モジュール型アーキテクチャ 必要な機能のみを選択して組み合わせることができるため、過剰な機能による無駄な投資を回避できます。

この結果、フルスクラッチの50~70%のコストで、パッケージの3~5倍のカスタマイズ性を実現できます。

直感的な操作でカスタマイズできる「ローコードWMS」

現代のDX推進において重要なのは、ITスキルを持たない現場担当者でもシステムカスタマイズができることです。インターストックのローコードWMSでは、以下の特徴により、現場主導でのシステム改善を実現します。

ビジュアル設定画面 帳票レイアウトや画面設計を、ドラッグ&ドロップの直感的操作で変更可能。プログラミング知識は不要です。

業務フロー設計ツール ワークフロー図を描くような感覚で、承認プロセスや作業手順をカスタマイズできます。

データ連携設定 外部システムとのデータ連携も、設定画面での項目マッピングにより実現。従来必要だったプログラミング作業が不要になります。

リアルタイム反映 設定変更は即座にシステムに反映され、テスト環境での確認も簡単に行えます。

※参考「製造業の物流改革を実現する「ローコード対応WMS」で稟議を通す方法

ポリシー次第でオンプレでの運用も選択可能

企業のセキュリティポリシーや規制要件に応じて、柔軟な運用形態を選択できるのもセミスクラッチ方式の大きな利点です。

ハイブリッドクラウド対応 機密性の高いデータはオンプレミス環境で管理し、一般的な業務データはクラウドで処理するといった使い分けが可能です。

段階的移行サポート 既存のオンプレミス環境からクラウド環境への段階的移行をサポート。業務への影響を最小限に抑えながら、モダンなクラウド環境の恩恵を受けられます。

マルチクラウド対応 AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど、複数のクラウドプロバイダーに対応。企業のクラウド戦略に合わせた選択が可能です。

セミスクラッチ型WMSの特徴

クラウド型WMSに関するよくある質問

1. クラウド型WMSのセキュリティは本当に安全なのでしょうか?

現代のクラウドサービスプロバイダーは、多くの企業が個別に実現できるレベルを超えた高度なセキュリティ対策を実施しています。例えば、データの暗号化、多要素認証、侵入検知システム、24時間監視体制などが標準装備されています。

また、ISO27001やSOC2などの国際的なセキュリティ認証を取得しているベンダーを選択することで、より高いセキュリティレベルを確保できます。重要なのは、ベンダー選定時にセキュリティ対策の詳細を確認し、自社のセキュリティポリシーとの適合性を検証することです。

2. 既存の基幹システムとの連携は複雑になりませんか?

最新のクラウド型WMSは、API(Application Programming Interface)による柔軟な連携機能を標準装備しています。多くのベンダーが、主要な基幹システム(SAP、Oracle、Microsoft Dynamics等)との連携実績を豊富に持っており、標準的な連携パターンは既にテンプレート化されています。

また、リアルタイム連携だけでなく、バッチ処理による定期的なデータ同期も選択できるため、既存システムへの負荷を最小限に抑えながら連携を実現できます。

3. 災害時の業務継続性(BCP)は大丈夫でしょうか?

むしろクラウド型WMSの方が、オンプレミス型よりも災害時の業務継続性に優れています。クラウドプロバイダーは、地理的に分散された複数のデータセンターでデータを冗長化しており、一箇所の障害が全体に影響することはありません。

また、インターネット環境があれば、災害時でも別の場所から業務を継続できます。重要なのは、ベンダーのSLA(Service Level Agreement)を確認し、復旧時間目標(RTO)や復旧ポイント目標(RPO)が自社の要件を満たしているかを検証することです。

※参考「いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~物流BCP~

まとめ

クラウド型WMSの導入は、現代の物流業界における競争優位性確保の重要な戦略です。SaaS型とASP型の違いを理解し、自社の事業規模、業界特性、セキュリティ要件、将来の成長計画を総合的に考慮して最適な選択を行うことが成功の鍵となります。

SaaS型WMSは、マルチテナント構造により低コストで迅速な導入を実現し、中小企業や成長企業に最適です。一方、ASP型WMSは、シングルテナント構造により高いセキュリティとカスタマイズ性を提供し、大企業や規制の厳しい業界に適しています。

そして、セミスクラッチ方式という第3の選択肢は、従来のパッケージとフルスクラッチの課題を解決し、コストとカスタマイズ性の最適なバランスを実現します。

ピーター・ドラッカーが提唱した「未来は予測するものではなく、創造するものである」という言葉のように、適切なWMS選択により、企業の物流部門は単なるコストセンターから、顧客価値創造の源泉へと変革できるのです。

物流のデジタル化は、日本の製造業・小売業の国際競争力向上に直結します。政府が推進するSociety 5.0の実現に向けて、各企業が適切なWMSを導入し、物流効率化を通じた生産性向上を実現することが、日本経済全体の持続的成長につながります。

WMS導入の検討において、本記事が皆様の意思決定の一助となれば幸いです。自社の現状と将来像を明確にし、7つのチェックポイントを活用して、最適なWMS選択を実現してください。

※関連記事「WMS(倉庫管理システム)の導入費用|タイプ別相場・内訳・ROIまでくわしく解説

ローコード対応WMS