利益を確保するためのロジスティクス管理指標の設定方法をお教えします|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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利益を確保するためのロジスティクス管理指標の設定方法をお教えします

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画像素材:freeangle / PIXTA

 

<目次>
1.上昇が続く売上高物流コスト比率
2.ロジスティクス管理指標の設定方法
3.ひたすら改善あるのみ

 

●1.上昇が続く売上高物流コスト比率

 

今日の企業の最も大きな物流課題の一つが、物流コストの上昇です。
売上高物流コスト比率はドライバーの賃金水準とトラック事業者数と強い相関関係があり、賃金の上昇と事業者数の減少が続く限り、物流コストの上昇を止めることは叶いません。

月刊ロジスティクス・ビジネスが2018年度の上場企業1634社の物流費を調査した結果、全社平均の物流コスト比率は2.55%となり、直近10年で過去最高を記録しました。
(注:売上規模の大きい三菱商事と伊藤忠商事は会計方針を変更したため、この2社を外した値)

 

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(出典:月刊ロジスティクス・ビジネス 2019年11月号データより筆者作成)

 

2013年に大手物流会社による値上げが始まって以来、上場企業の物流コスト比率は右肩上がりを続けています。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の調査によれば、2018年度、荷主企業の88%が取引先の物流企業から値上げの要請を受け、そのうちの95%が値上げ要請に応じています。

 

●2.ロジスティクス管理指標の設定方法

 

荷主企業にとっては、このような環境変化の中でしっかりと利益を確保していくために、物流コストだけではなく、自社でコントロール可能なロジスティクス管理指標を設けて、改善余地を発見し、効果性の高いロジスティクスを実現することが求められています。

ロジスティクス領域は生産管理や会計に比べて管理指標の運用について遅れています。
かといって闇雲に管理指標を設定しても上手くいきません。
管理指標が多すぎても運用が大変ですし、場当たり的に目の前の困った事象を対症療法的に設定しても効果がありません。

もっと組織的に構造化して、自社に必要な管理指標を設定する必要があります。以下にそのステップをご紹介します。

 

■ステップ1:ビジネスのあるべき姿(Key For Success)

自社のロジスティクスにおいて、どのような要素が成功要因になり、どのような結果が望ましいのかを確認します。
特に在庫に関わる管理指標は部門間によってトレードオフの関係が生じるので、より組織的、構造的に指標を設定する必要があります。
部門間の都合を優先した管理指標を、各部門がバラバラの思惑で設定しても、組織全体としては効果が上がりません。
自社のビジネスのあるべき姿、何を優先し、何を成功要因と定めるのかによって、管理指標を設定するように心がけましょう。

 

■ステップ2:あるべき指標を抽出し、優先順位を決める

自社のビジネスのあるべき姿と中長期の目標から管理指標を選定します。
管理指標を選定する際は、その指標が財務に関する項目なのか、顧客満足に関する項目なのか影響範囲別に整理して選定すると良いでしょう。

また選定された指標の中から特に優先する項目を選定し、まずは優先された指標についての目標を達成することに専念することで実現性が高くなります。

 

■ステップ3:管理指標の構造化

管理指標を構造化する上で、よく用いられるのが、バランスト・スコアカードです。
バランスト・スコアカードは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のロバート・S・キャプランとコンサルタント会社社長のデビッド・ノートンが1992年に「Harvard Business Review」誌にて発表した業績評価システムのことです。

バランスト・スコアカードでは、戦略とビジョンを財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点で分類し、それぞれの管理指標を関連付けすることで、それまでの財務中心の管理手法の欠点を補うことが出来ます。

以下の図はバランスト・スコアカードの4つの視点で管理指標を整理したものです。

 

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このようにバランスト・スコアカードを使って、ロジスティクス管理指標を構造化し、意味のあるものにしていくことができるのです。

 

■ステップ4:管理指標の責任者を決める

管理指標を上手く選定、構造化することが出来たら、次に行うべきはそれぞれの責任者を決めることです。
こうした改善活動が続かないのは、責任者の不在、もしくは適任でない人が責任者になっている場合です。

改善を進めていけるチームにするためには、組織として動くチームの基礎力を高めていかなければなりません。
チームの基礎力とは、「当たり前に出来る」というレベルのことです。
この当たり前にできることを増やしていくことこそが、基礎力の向上であり、改善を実行する力は、チームの基礎力から生まれるのです。

ですから適任である責任者を正しく任命して、当たり前に出来るレベルまでしっかりと管理を行う必要があるのです。

 

■ステップ5:IT活用によるシステム化

ここまで完了したら、最後に行うべきはITによるシステム化です。
それぞれの管理指標のデータをいかにして効率的に集めて、見える化するかが改善活動定着の最重要ポイントになります。
それでなくても日々の作業に追われている現場の負担が増えるような方法では、なかなか定着が難しいです。
またせっかく集めたデータもリアルタイムに共有され、見える化されていなければ、活用されることもありません。

現場のデータ収集の負担を極限まで抑え、誰でも簡単にデータが確認できるためのITを導入し、継続的に改善し続けることが可能な仕組みを構築しましょう。

 

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●3.ひたすら改善あるのみ

 

あなたが飲食店のオーナーとして起業した場合を考えてみてください。
最初は「集客」が最大の課題になります。
様々な手を尽くして、一人でも多くのお客様に来店してもらえるよう努力することが必要でしょう。

こうして徐々に「お得意様数」が増えていくと、客席の回転率を上げた方がより利益がでるはずだと考えます。
今度は「客席回転率」が最大の課題となるわけです。
開店当初のように、ゆっくりともてなすことが難しくなり、機械的にお客様をさばかざるをえなくなります。

そうすると、「リピート率」が下がり始め、再び「集客」が課題となってくるわけです。

ここで登場した「集客」「お得意様数」「客席回転率」「リピート率」のいずれも、あなたにとっては重要な管理指標です。
しかし、お店の目指すべき姿、状況によってどの指標を管理し、優先するかが違ってくることが分かるでしょう。

ビジネスとは、成果を出すことが求められ、複雑な課題に直面して頭を抱える人が多いようですが、やるべきことは常にシンプルなのです。

 

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<参考文献>
川原慎也著「これだけ!PDCA」すばる舎リンケージ
石川和幸著「この1冊ですべてわかる SCMの基本」日本実業出版社
「月刊ロジスティクス・ビジネス 2019年11月号」ライノス・パブリケーションズ