「物流品質を上げる」~管理項目と品質管理手法の基本⑨~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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「物流品質を上げる」~管理項目と品質管理手法の基本⑨~

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 画像素材: vectorartist777 /PIXTA

<目次>
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1.品質改善を「徹底」「継続」「維持」する方法

2.改善は自社を取り巻くネットワーク全体で考える

3.他業界の組織をベンチマークする

 


1.品質改善を「徹底」「継続」「維持」する方法

 

ものづくりの世界には熟練の技が求められます。私たちシステム開発の世界でも同様で、経験豊富な熟練のエンジニアは
今や引く手あまたです。10年かけてようやく一人前のプログラムが作れるようになると言われる世界です。

では、物流倉庫ではどうでしょうか?倉庫内のオペレーションも熟練の作業者が必要だと思われています。しかし、意外と
熟練の作業者が多い現場の方が誤出荷や在庫差異が多いというデータもあります。

セブンイレブンやマクドナルドではどうでしょうか?人材の入れ替わりが非常に激しい業種であるにもかかわらず、いつも
滞りなく一定の品質で業務が流れていると思いませんか?

それは新しく入ったスタッフでもすぐに一定レベルの仕事ができるよう、マニュアルや仕組みが整っているからです。
標準化したプロセスを続けていくためには文書化することが重要です。ISOのような厳密なプロセスの文書化を適用する
必要はありませんが、少なくとも、組織の方針や手順書を使用して、すべての主要なプロセスと重要な改善点について
文書化を行いましょう。

それが品質改善を徹底し、継続し、維持するためのはじめの一歩です。望ましい品質レベルを維持するために、
常に標準化されたプロセスをどのように実行するべきかを詳細に文書化しましょう。

またプロセスが改善されたら、方針や手順書を再度文書化して常に最新の状態に更新することも大切です。
そうでなければ、プロセスは簡単に以前の状態に戻ってしまい、苦労して改善したプロセスが水の泡です。

スタッフが新しく入れ替わる時には、この文書を使って教育を行うようにします。マニュアルには次のようなものが含まれ
ているのが理想です。

1.各プロセスの責任者
2.プロセスの境界を明確にする
3.改善フローチャート、技術情報、チェックシート

また世界共通語となった、改善(カイゼン)は継続性のあるものです。単発の改善は真の改善(カイゼン)ではありません。
私たち日本企業が世界に誇れる真の改善(カイゼン)とは、コストと品質を継続的に向上するために毎日行う”習慣”です。

改善に終わりはありません。その追求は事業がある限り続いていくものです。

いざ「改善を徹底するぞ!」となると、貢献度の低いスタッフや社員をまるで抹殺すべき敵のように扱うことが頻繁に起こります。
これは非常に残念なことです。朝の朝礼で特定のスタッフを槍玉にあげて厳しく叱責したりします。最初の回でも書きましたが、
品質改善の基本は、社員を尊重し、彼らの成長を支援し、雇用を守るという理念にあります。社員に対しては細心の注意とオ
ープンで率直なコミュニケーションが必要不可欠です。彼らの仕事に対する貢献に敬意を示し、職場における彼らの重要性を
広い心と長い目で見守ってあげてほしいと思います。

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2.改善は自社を取り巻くネットワーク全体で考える

 

自社の改善がある程度進んで定着してきたら、取引のある供給業者や提携会社が改善するのを是非支援してほしいと
思います。彼らを自分たちのビジネスの分身として考えましょう。これまで作成したプロセスやフローチャート図を
今度は自社を取り巻く広範なネットワーク全体で描いてみましょう。

取引先と自社との間でやりがいのある目標を設定することは、お互いのパートナーシップを強化することにもつなが
ります。他社と一緒になってこうした目標を設定しているケースは意外と少ないのです。取引のある業者に対して一
方的に品質目標を突きつけるのではなくて、一緒になって取り組める目標を設定しましょう。これだけでも効果は覿面
です。

取引先と共にチームとして継続的に彼らのプロセス改善およびコスト削減のために仕事をしましょう。
また今後は物流デジタル化が進んでいくので、取引先といかにデータを共有して蓄積されたデータを活用しながら
改善を進めていくかといった観点も重要になってくるでしょう。

一社単独での物流課題解決に限界を感じている企業が増えていますので、取引先と一緒に出資をしてシステムを構築
するような流れも今後は増えていくことになると予想されます。

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3.他業界の組織をベンチマークする

 

トヨタやウォルマートのように、世界的に高い品質を維持することで有名な企業が沢山あります。こうした異業種で
高い品質を維持している企業を積極的にベンチマークしましょう。ある物流企業では、異業種のアイデアを調査し、
分析するベンチマーク専門の担当者を配置していると聞いて、驚かされたことがあります。

彼らがやっていることを調査するだけでは意味がありません。それを自社で実践することが大切です。

たとえば、世界NO1のスーパーマーケットであるウォルマートは、いかなる理由でも顧客が不満を持っていれば、
簡単に返品を受け付ける方針をとっています。顧客が返品に行ったら、何も聞かれることなくすぐに新しい商品に交換
してくれたり、返金を受け付けてくれます。

物流では、輸送中に商品が破損したり傷がついたりすることがよくあります。そのような場合にウォルマートのように、
いかなる理由でも顧客が不満を持っていれば、保証する方針をとっている企業があるでしょうか。

「そんなことをすれば、物流会社はやっていけない」

本当にそうでしょうか?実践する前から決めつけてしまっていないでしょうか。

異業種の取り組みを無作為になんでもかんでも取り込めば良いということを言いたのではありません。物流業界の常識を
覆すようなことが、異業種では当たり前に行われていることは沢山あります。そうした取り組みがどのような効果を生み
出しているのかをしっかりと調査し、効果ありと見れば、自社でも実際に試してみれば良いのです。

さらに、ウォルマートでは「Always Low Price」というスローガンがあります。これは「いつも低価格」という意味です。
今の物流業界で、「いつでも低価格で運びますよ」というスローガンを打ち出している企業があるでしょうか?

現代はサブスクリクション型のビジネスが流行っていますね。サブスクリクションとは、一定の料金を支払うことで、
製品やサービスを一定期間利用することができる形式のビジネスモデルのことです。

サブスクリプションビジネスにおけるプラットフォームを提供する米国のZuoraは、サブスクリプション・エコノミー・
インデックス(SEI)の2021年最新版を発表しました。その調査の中で、SaaS、IoT、製造、出版、メディア、テレコミュ
ニケーション、教育、医療、ビジネスサービスといった業界において、サブスクリプションビジネスとS&P500企業の
ベンチマークとを比較してきた結果、過去約10年間のサブスクリプションビジネスの収益成長率は437%に達したと報告
しています。

いずれ、この波は物流業界にも押し寄せるのではないでしょうか。もしかすると毎月定額で物流サービスが受けられる時代
がくるかもしれません。長い間この業界にいるとそのようなサービスは到底不可能だという理屈や理論が先行してしまい
ますが、異業種の成功事例を「我々の業界とは違う」と頭ごなしに突っぱねるのではなく、しっかりと調査、分析、検討
することが重要ではないでしょうか。

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