経営者のための物流DX実践ガイド③ ~目標設定編~|在庫管理システムならカスタマイズに強い【インターストック】

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経営者のための物流DX実践ガイド③ ~目標設定編~

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 画像素材:tiquitaca /PIXTA

<目次>

1.国内企業のDX実行状況について

2.シンガポールDBS銀行のDX成功事例

3.経営者は変革を成し遂げられるか!?

 


1.国内企業のDX実行状況について

 

いま本稿を読まれている経営者の皆さまは、恐らくきっと、DX(デジタルビジネス・トランスフォーメーション)
を成し遂げ、自社を変革しなければと焦っていることと思います。しかし、まだご安心下さい。何故なら、ほと
んどの企業でDXは進んでいないからです。またこれは日本企業に限った話ではありません。欧米やアジアのデジ
タル先進国でも、DXに悪戦苦闘している最中です。

国内では、「デジタル化を実現し、ポストコロナの新しい社会を創る」ことを目的として、2020年11月にデジタ
ル化の司令塔となるデジタル庁を2021年9月に発足させる方針が固まりました。(少し余談ですが、5月15日の日
経新聞で”日本の印紙税がDX時代にそぐわないので見直しが必要だ”ということが書かれてありました。私の個人
的な意見としても、こうした不合理な税制はペーパーレス化や脱ハンコと並走してどんどん撤廃されていくこと
を願います)

また多くの日本企業では、ここ1~2年の間に「DX推進室」や「デジタル戦略プロジェクト」といった組織が設置
され始めました。先日訪問した大手化学原料メーカーで名刺を交換させて頂いた担当者の肩書を見ると、「DX推
進室 室長」となっていました。

「いつこの推進室は設置されたのですか?」と尋ねると、「実は先週なんです」とのこと。国も企業もDXについ
てはまだまだこれからといったところなのです。弊社が実施した経営幹部を対象としたユーザーアンケートの結
果によると(2020年11月~2021年4月実施、32社の有効回答)、7割以上の経営幹部が「DXの必要性を感じているが
具体的な取り組みはまだ実施できていない」と回答されました。(以下グラフ)

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2.シンガポールDBS銀行の成功事例

 

私たちの周りの企業を見渡しても現状の取り組みとしては、DXというより従来のIT化の延長にとどまっている
という印象です。DXを積極果敢に推進していかなければならない私たちベンダー側もまだまだDXについては研
究中です。大半のベンダーがDX推進に向けたチームの形成やプロジェクトの運用方法など手探りの状態ではな
いでしょうか。

実際、国内のITベンダーの売上の約80%はユーザー企業の現行ビジネスの維持・運営で賄われているという事
実があります。ユーザー企業側がいくら”攻めのIT投資”を実行したくても、それを手伝うITベンダーが期待に
十分に答えるだけのビジョンとスキルを持ち合わせなければDXは進まないでしょう。

さて、ここまで「DXについてはまだまだこれからだ」といった経営者の皆さまに安心して頂ける情報をご紹介
しました。ここから先は「でも、このままではいけない」という危機感を持って頂きましょう。

何故なら、実際にDXによって破壊的なイノベーションを実現している企業が既に存在するのも事実だからです。
一つ例をご紹介しましょう。シンガポールのDBS銀行は、デジタルトランスフォーメーションに成功した銀行と
して世界的に注目を集めています。金融情報誌「EUROMONEY」で2016年と2018年の2度「World‘s best digital
bank」という称号も得ています。

■DBS銀行の公式サイト

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DBS銀行は「これまでの銀行としての役割は今後必要とされなくなるため、さっさとデジタル化した方が顧客の
ためだ」ということで世界中の金融機関としては初めて、同社が持つシステムをAPIで社外に解放したのです。
APIとは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」の略です。ソフトウェアの機能を外部のプ
ログラムと連携させるための手順をまとめたものです。

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これは、DBS銀行が「銀行」から「ビジネス・アプリケーション・プロバイダー」へと変身を遂げる覚悟をしたと
いうことです。預金や為替のサービスだけでなく、自社のシステムを使いたいという顧客がいれば、そのシステ
ムを貸し出すということです。自社のインフラを提供することで顧客を囲い込む事業モデルであり、長年の銀行
としてのビジネスモデルを根底から覆し、徹底的に顧客側に立ち、デジタル化を推進しています。

DBS銀行はDX推進に伴い、以下の3つを変革目標として設定しました。

1.会社の芯までデジタルにするために社員を教育する
2.自らをカスタマージャーニーへ組み入れる
3.従業員2万2000人をスタートアップに変革する

私もこれまでデジタルの力によってあらゆる業界の垣根が壊されていることを書きました。DBS銀行は自らを破壊し、
銀行業務に縛られないかたちの企業へと変身を遂げるためにこの目標を設定されたのだと思います。


3.経営者は変革を成し遂げられるか!?

 

変革目標はDXを実行する際の土台となります。DXを大胆に実行するための変革目標はこれまでの目標設定とは違い
ます。多くの経営者の皆さんはこれまで成長戦略のための目標を設定してきたと思います。そのため、DXに求めら
れる破壊戦略には長けていません。これまでの成長戦略は既存のビジネスモデルの延長線上にあります。しかしDX
による破壊的な成長戦略に求められる目標設定はそうではありません。自社の目標設定が破壊戦略であるかどうか、
以下の点をチェックしてみてください。

□デジタル技術を使って、自社の顧客提供価値を劇的に改善できるか?
□既存の製品やサービスを活用して、新市場を形成、もしくは隣接市場に参入できるか?
□従来のバリューチェーンを使わずに、新たなバリューチェーンを創り出せるか?

DBS銀行の例を見ると、このいずれのチェックも満たしていることが分かります。破壊戦略は大きなリスクを伴いま
す。こうしたリスクをスイスの世界最大規模の検査・認証企業であるSGSのイノベーション上級統括責任者を務める
フレデリック・ヘレンは月探査ロケットの打ち上げや科学実験などに似ていると述べています。つまり、DXに投資
する際には、長い間IT導入で利用されてきた”費用対効果による稟議申請システム”は役に立たないということです。

企業が変革目標を設定するのはきっと簡単ではないと思います。またその目標を達成するのは更に複雑な仕事に
なるでしょう。しかし、変革は組織にとって必要不可欠のものであり、経営者にとって終わることのないタスク
なのです。

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